真理
(日本)
「鍵盤ガール」(04年作)
1.光射すままに・・・・。 2.庭に落ちたのはどっちだっけ? 3.クロエの憂鬱 4.哀しい予感
5.egoist merrygoround 6.雨の日のライナ 7.46(インスト)
女性シンガーソングライターの1st。
BOOK-OFF某店にて、中古で108円で販売されていたので購入してみた。
ネットで調べてみたのだが、詳しい経歴が全く分からなかった。
本人のウェブサイトも閉鎖されている様で、もう完全にお手上げである。
ネットでは楽曲の音楽性に関して、
「矢野顕子からの影響を強く感じさせる」と有った。
馬徳は現在(16年9月)、「矢野顕子」の音源は未聴ゆえ、You Tubeで
音源を聴いてみた。なるほど、確かに矢野女史の音楽性に通じるモノが有る。
ピアノを基調としたROCK/POPSに、ジャズ、クラシック、
歌謡曲等の要素を取り入れたモノ、というのが個人的な解釈だ。
どちらかと言えば、ポップス者よりロック者の方にアピールする音楽性だと思う。
Vo.と静寂を醸し出すピアノによる始まりの1曲目はミドルテンポ曲。
ちょいとミステリアスなピアノリフとリズム隊(Ba.、Dr.)が絡んで
小洒落た大人の雰囲気を演出する、ジャズ風のムーディーな曲調で進行。
間奏の前半では跳ね踊る様に軽快なピアノの弾き回しが聴け、後半では
ピアノがもう一つ加わり、ドラマティック寄りのアンサンブルを披露する。
2曲目はミドルテンポ曲。踊る様に軽快な、それでいて流麗さも見せるピアノが聴け、
淡々としたリズム隊と絡んでやや暗めの憂いを帯びた雰囲気を演出する。
だが、キュート系(?)Vo.によるひねくれ混じりの歌い回しを伴う事で
聴き手にコミカルな印象を与える。
3曲目はミドルテンポ曲。非運や悲運を表現した様なピアノが
重く、暗い雰囲気を演出するが、歌メロに幾らかのコミカルさが有るため、
それが重さ、暗さの軽減に繋がっている。
4曲目はピアノ二台によるミドルテンポ曲。流れる様に奏でられるピアノは
揺れ動く心の様子を描写した様であり、もう一つのピアノは
そこにドラマティックさを加味する役割を務めている。時折顔を出す
ミステリアスなフレーズがドラマティックさを強調しているのが良いな。
Vo.は物悲しい歌メロを何処か儚げに歌い上げるぞ。
5曲目はノスタルジックさを含んだ叙情的なピアノがリズム隊と絡んで
黄昏た雰囲気を醸し出すシリアスな哀愁のミドルテンポ曲。
これまでの曲と比べて、Ba.が幾らか前面に出ている。その低音が
曲のシリアスさに重みを加えており、間奏などで顔を出すコーラスは
雰囲気の助長に一役買っている。
6曲目は事態が謎めく様子を表現した様なドラマティックなピアノリフが
鬱々(うつうつ)とした雰囲気を演出しつつスローテンポで進行。
途中で場面転換が図られ、冷たいピアノが静寂を醸し出し、孤独感を
感じさせる沈鬱(ちんうつ)としたパートに移行する。間奏では
もう一つのピアノが登場。こちらはドラマティックなフレーズを奏で、ピアノリフと
絡んでドラマティックさを強化している。また、同時にコーラスも加わっており、
雰囲気に暗影(あんえい)、または暗澹(あんたん)としたモノを加味しているぞ。
ラストの7曲目はピアノ二台によるインスト曲。静けさを感じさせる始まりから、
哀愁、軽快、暗影、蠢動(しゅんどう)、衝動(または激情)と、
色々な面を見せ、最後はまた静けさに戻って幕を下ろす。
楽曲の多様性は十分であり、そこはまず高評価。
しかし、ほぼ全体的に内向的な感じの曇り、または暗い曲で占められているのが
個人的には残念に思う。明るい曲も2曲くらいは欲しかったな。
楽曲の方向性としては、メロディーを歌い上げる事よりも
楽器陣のプレイやアンサンブルを聴かせる事の方に
比重が傾けられている印象を受ける。使用している楽器は
ピアノ(一台か二台)とBa.、Dr.だけなのだが、このシンプルな編成で
聴き手を楽しませる事が出来るのは実力の有る証拠と言えるだろう。
評価 76点
2、5がオススメだ。